特集●家族との対話
(2004.1.24 StepT・U合同 NPO発足1周年シンポジウム午前の部  楡木満生先生 記念講演より抜粋

「わたし」と「あなた」の心理的距離


「家族」の問題は難しいと、おそらく皆さんが感じていると思います。
家族のさまざまな問題の原因を考えると、ご夫婦、親子のお互いの
心理的距離が大きなポイントになります


たとえば、お互いの心理的距離が近すぎる家族があります。
「べたべた家族」と名前をつけるとわかりやすいでしょう。
お互いに相手に口出ししたり、「うちの子供ならこのくらいの学校に」
などと自分の理想にあわせようとする関係の家族です。

お互いに相手を「同一視」してしまい、わたし=あなた
となり、わたし(自分)とあなた(相手)の区別がついていないのです。
問題は、自我同一性(※)が確立できていない点にあります。
自我同一性とは「自分が何者であり、将来、社会の中でどういう
役割を果たしていきたいのか」ということで、時間と共にでき
あがっていきます。

「べたべた家族」は、お互いに自我同一性ができて
いないうちに結婚するカップルの家族に多いともいえるでしょう。
つい、自分の理想像に近づけようと、相手を動かしたくなる。
このような家族には、お互いに自立することを治療しています。

結局、大切なのはわたし(自分)はわたし(自分)だと、
わりきらなくてはいけないということ。
家族でも、わたし(自分)を確立することが大切です。


逆に、お互いに心理的距離が遠すぎる家庭がありますね。
家族療法のことばで「ホテル家族」といいます。
「さらさら家族」と名前をつけたら、わかりやすいでしょう。
寝起き、食事の時間も
別々別々の人生を生きていく家族です。
自我同一性ができてから、結婚する方のカップルの家族に
多くみられます。

「べたべた家族」と「さらさら家族」。
なぜ、このような家族ができるのかというと、
自我同一性と関連してきます。

つまり、適切な心理的な距離をとれていないと、
家の中が上手くいきません。
わたし(自分)とあなた(相手)はそれぞれ違うのですから、

お互いがその部分を許しながら、しかし長い目で見て
つき合っていくことが大切です。
心理的な距離が近すぎたら、離れる。遠すぎたら、近づくことが、
重要なポイントになってきます。

※自我同一性

  「自分は何者でもない自分であり、過去・現在・未来を通し不変である」という感覚と、「そうした自分に対する感覚が、社会の中で、同様に認められ位置づけられている」といった感覚を併せ持つこと。
 エリ
クソンは青年期(12〜19歳)の主要なテーマであるとしています。
楡木満生にれぎ みつき)
Profile
 医学博士臨床心理士・
日本カウンセリング学会認定カウンセラー・
上級産業カウンセラー。
立正大学心理学部長・教授。
『あなたはいまどこで悩んでいる?
―人生の階段の登り方』新書館など著書多数。
当NPO法人理事
                          

ワンポイント・レッスン


 エリクソン(Erikson,E.H)は、20代前半から後半にかけて、まず親密性をいかに発揮するかが大切だと言っています。
 自分の中にきちんとした確固たる自己ができていれば、周りの人に安心して近づくことができます。自分探しの終わっていないひとが結婚や就職で、他者と親密な関係を構築しようとすると難しくなります。
 自分が周りに対して親密性を発揮するには、その前に自分の自我同一性(アイデンティティ)がきちんと確立されていることが前提になります。

                (はあと編集部)

●参考文献 
楡木満生著・新書館
『あなたはいま
どこで悩んでいる?』






テキスト ボックス: エリクソン
他者と親密になれる自己 
『はぁと』 vol.6 2004 春号より


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